「映画芸術」の神代辰巳追悼号(1995年夏号)をパラパラめくっていたら、山田宏一氏が『四畳半襖の裏張り』についての作品評を書いていました。ついつい引き込まれて読んでしまいました。ちょっとだけ引用させてください。
「十日間、750万円で」というロマン・ポルノの厳しい撮影条件の中で、「わりと気楽に遊んじゃった」…という神代辰巳作品だけあって、どんな画面からも、ここはこうやったらおもしろいぞといったような作り手の即興に近い衝動的な意欲や喜びが伝わってくるかのようだ。長回しのキャメラによる持続した緊張感のなかで、シネマスコープの横長の画面の片隅に泣くシーンなのにくすっと笑っている女優がいると言ってフランソワ・トリュフォー監督がひどく面白がっていたものである。早撮りをしてフィルムの無駄遣いもできないので撮り直しがきかなかったのだろうが、じつはそのほうが画面にいきおいが出て、人物もいきいきとしている、ジャン・ルノワールの映画みたいだ、と。
この、「ジャン・ルノワールの映画みたいだ」とのトリュフォーの言葉は、「男のエゴイズムと愚劣さに対して、女の寛容さと美しさを描いた」神代辰巳作品に対する讃辞でもある、と山田氏は解説しています。
いいですねえ。